日常から離れ、五感を休ませる。福島・いわきの隠れ家「HASH村」で過ごすスローな時間

福島県いわき市の北西部にあるいわき市三和町。人口30万超のいわき市のなかでも、自然豊かな里山の風景が広がるエリアだ。7月初旬の夏真っ盛りの時期、いわき三和ICそばのコンビニで冷たい炭酸水を購入し、一息入れていた。

スマホアプリの地図に今回の目的地をセットし、交差点から山間へと続く道へ車を走らせる。まばらに家が立つ細道を抜け、林が続く道を進んでいく。対向車に気をつけながら10分ほど走ると、左手にひらけた場所が見えてきた。

ウインカーを出し、園内の駐車スペースに車を停める。敷地の中央に鎮座するダークブラウンの古民家は、昔ながらの趣と、リノベーションされた新しさが絶妙に調和した佇まいで筆者を迎えてくれた。

HASH村。奥側古民家(母屋)、手前側炊事棟

■ 東北エリアでは珍しい「貸切対応」の野外研修・キャンプ施設

今回目的地としたのは、2019年からキャンプ場、野外研修やキャンピングオフィス事業などを展開する「HASH村」だ。東北エリアにおいて、公的機関以外の施設で野外研修やキャンピングオフィス事業の実施を謳っている場所は少なく、筆者自身、以前から一度訪れてみたいと気になっていた。

この施設の最大の特徴は、「貸切」に対応している点だ。平日は企業や団体向けの野外研修やレクリエーションの場として。土日などの休日は一般向けに施設の開放を行い、プライベートなキャンプ利用も可能となっている。

このHASH村は野外研修の宿泊施設としても稼働しているため、設備も非常に充実している。トイレやシャワールームは清潔感があり、炊事棟やBBQ棟も完備。特にBBQ棟は屋根付きで雨天時も支障がなく、側面には防虫ネットが張られているため、夏場でも虫を気にせず快適に過ごせる造りになっており、古民家内での宿泊はもちろんのこと、敷地内でのキャンプ宿泊も可能だ。

全天候型のBBQ施設(6m×18m)
炊事棟内にあるシャワー室
綺麗に整備された敷地内の様子

■ 離職率の悩みから生まれた「HASH村」の物語

HASH村が野外研修施設として産声を上げた背景には、ある切実な課題があった。運営元である有限会社クルーズプランニング(カー用品の商品開発や健康事業を展開)が新たに介護事業を立ち上げた際、人材がなかなか定着しないという壁に直面したのだ。

社内でセミナーを開催しても、想いが響かない。悩む橋場社長に、知人から「野外研修を取り入れてみてはどうか」という提案があった。試しに社長と社員たちで数名が参加してみたところ、その体験に深く感銘を受けたという。

「仲間と一緒に、自然の中で色々なアクティビティを行い、座学で考えるよりもたくさんの気づきをもらえました。そうして仲間同士お互いを知ることで、互いの違いも受け入れられる、絆が深まるという今までにない体験をさせてもらいました。焚き火を囲っておこなうプログラムでは感極まって涙を流すメンバーもいました。」と取材に応対してくれた、HASH村管理者の門間氏は語ってくれた。

民家(母屋)内の様子

その研修で感じたこと、考えたことをきっかけに、職場内で社員同士が本音で語り合い、互いを深く知れる環境が少しずつ形作られるにようになったという。結果として、多額の広告費をかけても集まらなかった人材が集まるようになり、人の入れ替わりが激しかった職場が、着実に「長く働き続けられる職場」へと変わっていった。

この実体験を他の企業にも伝えたい——。それがHASH村誕生の原動力だ。偶然にも現在の敷地は橋場社長お気に入りのサイクリングコースにあり、草刈りに来ていた家主に相談。その後、地元の引退した大工の力を借りながら、自社スタッフたちの手で足掛け3年もの月日をかけてリノベーションを施し、2019年のオープンに至った。

■ デジタルデトックス空間が生み出す、本音の交流

周囲に民家がないHASH村では、時間を気にしたり、周りに気を遣ったりすることなく心ゆくまで交流ができる。

緊急時用のWi-Fiは整備されているが、携帯電話の電波は入りにくい。だからこそ、メールや電話など「日常」を思い出させるものは限りなく流入してこない。利用者は古民家でゆったりとくつろぐのもよし、庭でアクティブに動いたり、付近の川で川遊びを楽しんだりと思い思いの時間を過ごせる。

利用スタイルも幅広く、敷地内の芝生にタープを張り、イスとテーブルを出してのキャンピングオフィスから、ピザ作り、宝探しアクティビティまで対応。HASH村担当の門間氏がファシリテーターとなり、利用者の要望に合わせたプログラムの提案も必要に応じて行ってくれる。

また、門間氏によれば、企業の新人研修として活用されるケースも多いという。全国配属前の同期が交流を深める場として機能し、大自然の中で見せる「素」の姿が、一人ひとりの個性や強みを知るきっかけになったり、参加者同士の強固な絆を育んだりする貴重な機会となっているそうだ。

■ 企業研修からグループキャンプまで広がる活用法

音楽イベント(野外LIVE)の様子

企業・団体向けの野外研修を主軸としつつも、場所を貸し切っての音楽イベントも開催されていたり、全天候型のBBQ施設や古民家宿泊が可能なため、複数組の予定を合わせるグループキャンプでの貸切需要も高く、土日は県内外からの一般利用も多い。山々に囲まれた立地だからこそ、音楽イベントや花火、大人数での盛り上がりも気兼ねなく楽しめる。 野外で動画を楽しめる設備も整っており、和気藹々としたプライベートな楽しみ方ができるのが魅力だ。

■ 五感を休ませ、自分たちの内面と向き合う時間

今回この施設を訪れて強く惹かれたのが、里山の景観だ。広葉樹に囲まれたロケーションは、門間氏によれば、秋になれば見事な紅葉に包まれるという。太い梁が目を引く古民家は、郷愁を誘うような温もりに満ちている。

そして何より気づかされたのは、ここには「人の五感を緊張させる要因」が驚くほど少ないことだ。電波が入りにくいためスマホの着信を気にする必要はなく、通りを走る車の音も聞こえない。また、周囲には民家も無いので、人工音もなく、人工音も少なく、ただ自分たちの活動する音と、風の音、鳥のさえずりだけが響く、隠れ里のような雰囲気なのだ。

そうした環境を貸し切って、自分たちの内面に静かに思いを馳せたり、仲間との交流に華を咲かせたりする時間は、現代においてとても貴重ではないだろうか。

【INFOMATION】
 HASH村
福島県いわき市三和町下永井銅屋場267 
アクセス情報:磐越自動車道いわき三和ICから車で約10分
HP:https://www.ハッシュ村.jp
Instagram:https://www.instagram.com/hashmura.jp/ 
FB:https://www.facebook.com/hashmura.jp/

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この記事を書いた人

マーシー マーシー TOLM編集部

”東北のアウトドアの魅力を発信したい!”とノリと勢いだけでTOLM(東北アウトドアライフスタイルマガジン)を立ち上げた張本人。
広大な東北の地でアウトドアな生活を行っている人達に出会いに行くべく、日々車を走らせている。

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